理学療法士の中には「私は確定申告しないとダメ?」と疑問に思っている人は多い。
そして疑問に思いながらも放置している人もいるんじゃない?
税金の話はややこしいから、できることなら避けて通りたいよね。
でもちょっと待って!
確定申告しなかったら、本来払うはずの税金に加えて、何割も増した追徴課税をとられることもあり注意が必要。
今回は理学療法士の確定申告について。
あっ、理学療法士って書いてるけど、作業療法士でも言語聴覚士でも看護師でも介護福祉士でも一緒ね。
お伝えすることは以下の2点。
- どんな人が確定申告をする必要があるのか?
- 副業収入も確定申告しておかないとバレる可能性がある理由
確定申告がよくわかってない理学療法士は、この記事を読めば自分がやらないといけないかがわかる。
とにかく知らないでは済まされない話なので、ぜひ最後まで読んでみて。
確定申告を知る上でのキーワードを解説しておく
こちらの記事を読む上で、ややこしいキーワードだけ解説しておくね。
知ってる人は読み飛ばしてもらっていい。
知らない人はこの違いだけは知っておかないとこの後の話がややこしくなる。
源泉徴収票があれば、手元に置いて見ながらすすめれば理解が深まるはず。
まず「収入」。給与明細でいう額面のこと。月の収入が月収。
源泉徴収票で『支払金額』が年収にあたる。
次が「所得」。正社員で働く理学療法士の場合、年収から給与所得控除を引いたもの。
源泉徴収票では『給与所得控除後の金額』がこれに当たる。
所得=年収-給与所得控除
ここまではいいかな?
ややこしいのはここから。理学療法士が開業をして自分で事業をした場合や、副業で整体院を営んでいる場合。
「いわゆる売り上げ=所得」ではない。
うん、もうややこしい。
早いな。もうちょっとがまんや!
本業でも副業でも一緒やけど、開業して仕事をする場合、経費が必要になってくるでしょ?
飲食店ならお店の家賃や材料を仕入れるお金は経費。
理学療法士が整体院を営めば、同じように店舗の家賃や、電話やネットの通信費、広告費などは経費となる。
なので、売り上げから経費を引いたものが所得となる。
所得=売り上げ-経費
極端な話、100万円売り上げても、家賃や通信費、広告費に90万円使っていれば、所得は10万円しかないことになる。
なんとなくわかってきた。
なんとなくでOK。
この先ややこしくなったら、もう一回ここに戻ってきてね。
理学療法士で20万円を超えるお金を副業で稼いでいる人は確定申告
ここからが本題。理学療法士で確定申告をしないといけないのは、20万円を超えて副業で稼いでる人。
20万円以下なら確定申告は不要って聞いたことない?
いわゆる「20万円以下申告不要ルール」ってやつね。
そのままやん。
俺に言われも・・・。
国税庁のホームページには、確定申告が必要な人として次のように書かれている。
(1) 給与の収入金額が2,000万円を超える
(2) 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える
(3) 給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える
(1)はおらんと思うから、(2)と(3)を理学療法士に当てはめて解説するで。
給与は1か所でその他の所得金額が20万円を超える場合
給与は1か所なので、非常勤で他の病院や介護施設では働いていないってこと。
その他の所得ってなに?
これが副業の所得。
その他の所得には次のようなものが当てはまる。
- 副業で整体院を開業して、売り上げから経費を引いたもの。
- カフェを経営し、売り上げから経費を引いたもの。
- ブログなどの広告で得られる雑所得
- 出版や原稿執筆料などで得られる雑所得
- 株の配当所得
所属先の病院や介護施設以外で得ている、副業に対する所得全般を指す。
これが20万円を超えれば確定申告が必要。
本の出版や原稿の執筆、株の配当でおこづかい程度を得ている理学療法士はいても、年間で20万円を超える人は少ないかも。
このケースで20万円を超えるには、副業で整体院をしているか、ブログなどで大きく稼ぐか、どちらかと想定される。
2か所で働いていて非常勤の給与が年間20万円を超える場合
理学療法士で多いのはこれ。
常勤として勤める職場以外の病院や介護施設、訪問看護ステーションなどにバイトに行って、給与をもらってるパターン。
ちなみに2か所って書いてるけど、2か所以上でも同じね。
非常勤でもらう給与が年間20万円を超えれば確定申告しないといけない。
年間20万円くらいやったら超えるかな?
超える人多いんちゃう。
たとえば、月1回日給2万円の非常勤に行けば、年間で24万円になるから確定申告しないといけない。
訪問リハビリのアルバイトに週1回行ってる人なんか、年間で給与が100万円くらいになるから、絶対確定申告は必要。
ここでの注意点がふたつ。
ひとつは年間20万円を超えるかどうかは給与の収入。つまり税金を引かれた手取りの合計ではなく、額面の合計が20万円を超えるかどうか。
もし給与収入が年間20万円を超えるなら、確定申告しないといけない。
もうひとつは、非常勤勤務での給与以外に、原稿執筆料などその他の所得がある場合は、非常勤の給与収入とその他の所得の合算で20万円を超えるかどうかが問題となる。
その他の所得の方が収入じゃなく所得ってところもポイント。
ややこしいなぁ。
ややこしいので、それぞれ図にしてみた。
まず(2)のその他の所得が20万円を超えるパターンはこんな感じ。
次に(3)の常勤と非常勤など2か所で働いていて、非常勤の給与が年間20万円を超えるパターン。
これはわかりやすいよね。
最後が同じく(3)だけど、非常勤の給与とその他の所得で20万円を超えるパターン。
この3つに該当すれば、確定申告しよう。
あなたはどうですか?
副業収入や所得が20万円以内の理学療法士は住民税の申告は必要
「私は非常勤の給与が年間20万円以内だから確定申告しなくても大丈夫」と思ったそこのあなた!
ちょっと待って!
そんなあなたにもうひとつ伝えないといけないことがある。
それは副業の収入や所得が20万円以内で確定申告が不要でも、住民税の申告は必要ってこと。
はっ?さっき確定申告せんでもええっていうたやん。
確定申告はいらん。でも住民税の申告は必要。
ここまで書いてきた「20万円以下申告不要ルール」や、確定申告をするしないの話は所得税について。
私たちが収める税金でもうひとつ重要なものに都道府県や市町村に納める住民税もある。
住民税は非常勤の収入が20万円を超える超えないに関係なく、その所得分を納める必要がある。
確定申告の必要がなくても、市町村の役所に出向いて、県民税・市民税について納付の方法を確認しよう。
確定申告をすれば、その情報は役所に通知されるので、別途納めなくても、次年度の県民・市民税に反映されている。
副収入がない理学療法士でも確定申告が必要なケース
基本的には給与が1か所のみ(=勤務先が常勤の職場だけ)なら、確定申告はしなくてもいい。
ただし、給与を1か所からしかもらっていなくても、確定申告しなくてはいけない、またはした方がいいケースもある。
それがこの3つのケース。
- 年間の給与の収入金額が2000万円を超える
- 個人もしくは生計が一緒の家族で年間10万円を超える医療費を使った人
- ワンストップ特例制度を利用せずにふるさと納税した人
年間の給与の収入金額が2000万円を超える人は確定申告しなくてはならない
上で「年収が2000万円もあるような理学療法士はいないやろう」とスルーした話。
年収が2000万円を超える理学療法士は確定申告しなくてはなりません。
なぜなら、年収2000万円を超える人は年末調整の対象から外れているから。
国税庁のホームページには次のように書かれている。
12月に行う年末調整の対象となる人は、会社などに1年を通じて勤務している人や、年の中途で就職し年末まで勤務している人(青色事業専従者も含みます。)です。
ただし、次の二つのいずれかに当てはまる人は除かれます。(1) 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人
なんで2000万円超えたら年末調整してくれへんのやろうね?
諸説あるけど、高所得者を把握しておきたいっていうのがあるみたいよ。
そうはいっても年収が2000万円を超える理学療法士はほとんどいない。
もしいるとすれば、自分で事業をしている人でしょうから、そんな人は税理士がついてるので問題ないはず。
年間10万円を超える医療費は医療費控除の対象となる
あなたはおそらく元気に働いているでしょうから、年間に10万円を超える医療費を払うことは稀かもしれません。
でも、
- 初めて大病にかかり手術を入院を経験した
- 奥さんが出産した
- 子どもが大ケガをした
などがあると、年間で10万円を超える医療費を支払うことがあるかもしれません。
そんなときは確定申告すれば、10万円を超えた分が控除の対象
医療費控除の概要はこちら。
その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。
医療費と書いてるけど、「医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受けるために直接必要なもの」として、病院に通うために使った電車代なども含めることできる。
それらも含めて10万円を超えるかどうか。
どれくらいの所得控除の恩恵を受けられるの?
実際にはそれほど返ってこない(笑)
10万円を超えた部分が控除の対象になるが、10万円を超えた額がすべて返ってくるわけではない。
医療費控除の計算式については、かなりややこしいので、わかりやすく書いていたサイトを紹介しておく。
「今年は入院してけっこう医療費を使ったわ」という人はチェックしてみてね。
あと医療費の件では、市販の薬を多く買った人も所得控除を受けられる可能性がある。
セルフメディケーション税制といって、対象の市販薬を買った人に医療費控除が受けられる制度。
厚生労働省のホームページには次のように書かれている。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。
どんな薬でもええの?
対象の薬にはセフルメディケーション対象のマークがある。
このマークがついてる市販薬を買った金額、年間1万2千円を超える部分は税控除の対象になる。
ただし、医療人は市販薬を使わずに自分の病院で処方してもらうことが多いと思うから、この制度を使える人は少ないかも。
ワンストップ特例制度を利用せずにふるさと納税した人
最近ふるさと納税が流行ってるよね。
ふるさと納税を利用した人で、ワンストップ特例制度を利用していない人は確定申告すれば所得税の控除が受けられる。
ワンストップ特例制度ってなに?
確定申告せずに控除が受けられる制度のこと。
ふるさと納税を利用した人で、「なにそれ?」という人は自分が特例制度を利用したか調べてみてね。
確定申告では税金を払うだけじゃなく還付金が戻ってくるチャンス
確定申告って何か悪いイメージを持っている人が多い。
「確定申告に行ったらさらに税金を払わされる」と思ってない?
医療費控除やふるさと納税の話を読めばわかるけど、確定申告は支払い過ぎた税金の還付を受けるチャンス。
自分で開業をしている人、たとえば個人事業主としてカフェや美容院、整体院などを営んでいると月々所得税は支払わない。
1年間の所得(売り上げから経費を引いたもの)を確定申告して、それに対する税金を支払う。
後からごそっと税金を支払うってこと。
おそらくこれがあるから、確定申告に行くとまたお金を支払うイメージがあるかも。
一方で、非常勤で働いている人は、月々の給与から所得税が引かれている。
非常勤先の給与は、「主たる給与」(=常勤の給与)ではなく「従たる給与」という扱い。
この従たる給与では、税額は多くなっている。(乙欄)
これが本当に重要。
何が重要なん?
所得税を払いすぎてることが多いから、確定申告すれば還付金を受けとれる可能性が高いってこと。
非常勤で年間100万円くらい稼いでる人は、けっこう還付される可能性が高いから、払いすぎた税金を取り戻そう。
一時期非常勤とフリーランスの仕事で生活していたことがあったのですが、その年の確定申告では、なんと47万円の還付金があった!
そのときの申告書の写真。
還付される税金のところの477,745円が返ってきましたが、もし確定申告していなければ、この47万円は返ってこなかった。
そう考えると確定申告は絶対にやらないとダメやね。
理学療法士は確定申告しないといつかバレる
ここまで確定申告について書いてきたけど、しなくてもバレないって考えてる人もいるんじゃない?
非常勤で確定申告をすれば還付金が受け取れる可能性が高い一方、副業で整体院を営んでいる人にとっては、さらに税金を納めることになる可能性が高い。
そんな人は、「副業でちょこっと稼いでるだけだからバレないやろ?」と思うこともある。
でも絶対あかん。
税金をごまかしたら、いつかはバレると考えた方がいい。
中学校の社会の復習だけど、納税は義務だったよね?日本国憲法にそう書かれてる。
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
引用)日本国憲法
その義務を放棄するわけだから、それは罪になる。
確定申告をせず税金を支払わなかったことが後からバレるとペナルティとして追徴課税(無申告加算税、延滞税、重加算税など)が課される。
でも少額やったらバレないやろ?
いやいや、しつこいようやけど、バレる可能性が高いと考えた方がええで。
たとえば、会社(個人の場合もあり)があなたに支払った給与や報酬を経費として申告していたとする。
その会社はあなたに支払っているのに、あなたがその給与や報酬を申告していなければ税務署的には「あれ?」ってなるよね。
また年収が400万円なのに1億円のマンションを買えば、税務署は「なんでそんな高いマンションが買えるの?他に収入があるんじゃない?」となる。
他にも、知り合いが税務署に密告するケースもあるし、SNSで超高級腕時計を自慢しているのを税務署の職員に見られて目をつけられることもある。
たしかに。こうやって聞くとバレる可能性はありそうやな。
そやろ?悪いことはしない方がええよ。
繰り返しになるけど、絶対に税金はごまかしたらダメ。いつかはバレるからね。
確定申告書類の作成は市町村の申告会場で教えてもらうのが一番簡単
もしあなたが確定申告しないといけなければ、方法は主に3つある。
- 税理士に依頼する
- 自分のパソコンからe-Taxを使う
- 市町村の確定申告会場でする
初めての人なら市町村の確定申告会場でするのがおすすめ!
税理士に依頼するのが一番いいのは誰でもわかってる。細かい計算もいらないし、丸投げできるし。
でも税理士に依頼すると、もちろん費用がかかってくる。
確定申告の費用の相場はおおよそ3~5万円。
副業収入がたくさんある人なら高くないけど、そうじゃない人にとっては大金だよね。
あと慣れてくればe-Taxを使ってやるのもあり。
ただ初めての人にはけっこう難しい。ネット上でいろんな項目を入力していくけど、それが間違っていないか、その判断ができない。
だから市町村の確定申告会場でするのが、初めての人には一番楽だし確実。
毎年2月末に各市町村で確定申告会場が設けられる。
会場には税理士がいるので、必要書類(常勤と非常勤の源泉徴収票など)を持参すれば、入力方法を丁寧に教えてくれる。
税理士の指示通り入力すれば、あっという間に確定申告が完了するよ。
市町村の確定申告会場で確定申告をするデメリットは、会場が混雑していること。
びっくりするくらい混んでることもあって、パソコンで入力するのは10分くらいだけど、パソコンの順番がまわってくるまでに1時間以上待つこともある。
このあたりは各自治体によると思うから、混雑していないこともあるかも。
確定申告の会場は「(自分の住んでいる市町村名) 確定申告」などで検索してみよう。
まとめ
理学療法士の確定申告の疑問について書いてきた。長くなったのでまとめる。
- 非常勤の収入が20万円を超える人は確定申告する必要あり。
- 少額でも稼ぎがあるなら、確定申告しないといつかはバレる
- 確定申告では還付金がもらえる可能性もある。
最後にもう一度あなたに伝えたいことがある。
「副業で稼いでるなら確定申告をしよう」
バレたら本当に大変だし、バレずに過ごせるなんて思わない方がいい。
今回の話はしっかり調べて書いたが完璧じゃないかもしれない。(私は税理士じゃないので)
「なんか副業の収入が20万円くらいで微妙なんだよね」という人は、税務署に行って聞いてみよう。
税務署は、自ら税金のことを聞いてくる人には丁寧に対応してくれる。
だって説明がややこしかったら、税金を払うのが面倒になる人がいるかもしれないでしょ?
誰でも税金は払いたくないけど、それは仕方がないことだと割り切る。
非常勤でいっぱい稼いでる人は還付金がもらえるチャンスがあるから、絶対確定申告をしないと損するで。