今回の記事では、理学療法士を辞めた人のその後の仕事について、実際に転職を経験した2人の後輩にインタビューした。
この記事を読んでいる人は、理学療法士を辞めたかったり、違う仕事に転職しようと考えている人だと思う。
でも養成校では高い授業料を払い、つらい実習を乗り越えて理学療法士になったから、理学療法士を辞めることに抵抗がある人は多い。
今回はそんな理学療法士からの転職組にスポットを当てる。
理学療法士を辞めて他の仕事に就いた人は、どんな思いで転職し、どんな思いでいまの仕事をしているのか。
理学療法士を辞めるときのポイントも浮かび上がってきたので、理学療法士を辞めようとしている人はぜひ最後まで読んで欲しい。
理学療法士を辞めて別の仕事に就く人が増えてきた
理学療法士を辞めて別の道に進む人が増えてきた。
あなたもわかっていると思うけど、理学療法士は簡単に取得できる国家資格ではない。
めちゃくちゃ勉強して、つらい実習にも耐えて、国家試験に合格してやっとつかんだ理学療法士免許。
それを使わない道に進むって普通は「えっ?」ってなる。
でもいまは違う。
理学療法士でも違う仕事に転職する人が増えている。その理由はおそらくこのふたつ。
- なんとなく理学療法士になってしまった人が増えてきた。
- 経験年数を重ねて他の仕事にも興味を持ち始めた
厚生労働省の調査によると、平成26年に理学療法士として働いている人数は104,928人。
これは平成14年(34,258人)の3倍以上となっている。
データ引用)厚生労働省「医師・看護職員・理学療法士・作業療法士の従業者数について」
理学療法士は需要があるとか、福祉はこれからも就職できるとか、そんな学校の宣伝文句が効いたのか。
国家資格が取得できる理学療法士は人気になった。
ただそうなると本当に理学療法士になりたくなくても、とりあえず国家資格取れるし、就職もできるならと学校に入学する人も増えてくる。
そんな人でも学校を卒業して国家試験に合格することができれば、理学療法士となって働く。
これがあかん。
こういう人は仕事を始めてから、イメージしてた理学療法士とのギャップに苦しむ。
給料が安いし、休みも少なく、患者さんの対応に悩んで辞めて人も多い。
あと医療従事者独特のヒエラルキー(階層組織)が嫌になる人もいるね。
もうひとつは、理学療法士として働きながら社会を見る機会が増えると、新しい可能性が気づくこともある。
たとえば、理学療法士をしてるけど、たまたま立ち寄ったカフェに感激してカフェを始めるとか。
それまで気づかなかった違う仕事の魅力に気づき、「もしかしたら自分がやりたかったのはこれじゃないか」って考えるようになる。
理学療法士しか知らないから、余計に違う世界に可能性を感じるのかも。
理学療法士からの転職では医療職以外に進む人もいる
理学療法士からの転職では、基本的に医療職やスポーツ関連、介護職への転職が多い。
- 医師
- 看護師
- アスレティックトレーナー(AT)・スポーツトレーナー
- 柔道整復師
- 福祉用具業者や商品開発
- 整体サロンなどの起業
- 訪問看護ステーション開業
- デイサービスの立ち上げ
その他には、会社員、教師、公務員、お店を開業などもいます。
理学療法士から別の道に進んだ2人のその後
今回は、理学療法士の資格をまったく生かせない全く別の職業に就いた、元理学療法士2人に仕事の話を聞いてみた。
理学療法士から中学校の保健体育教師に転職
一人目は、理学療法士から中学校の保健体育教師に転職した元理学療法士こういちさん。
こういちさんの簡単なプロフィールはこちら。
- 高校卒業後、大学にて中学・高校の保健体育教諭免許を取得。
- 大学卒業後、就職せずに理学療法士の専門学校に入学。
- 3年後に専門学校を卒業。国家試験に合格し。理学療法士免許取得。
- 専門学校卒業後は総合病院で3年間勤務した後、中学校教員採用試験に合格。
- 現在は某県で中学校の保健体育の先生として勤務している。
プロフィールにあったように、私はもともと教師になりたかったので、大学で体育の教員免許を取りました。
大学で学んでいるときに理学療法士を知り、興味が湧いてきて理学療法士を目指しました。
理学療法士免許取得後3年間は働きましたが、やっぱり教師になりたい気持ちが強くなり辞めることにしました。
あったんですけど、教師として働きたい気持ちが強かったので、そこは大きな問題じゃなかったです。
これはかなりプラスになったと思っています。
まず私が受験した県では、理学療法士免許を持っていると一次試験で加点されます。
あと私が受験したのは保健体育なので、理学療法とつながる分野もありますよね。
これが国語や社会なら微妙だったかもしれません。
面接では現役大学生に比べたら回り道している分、加点されたと勝手に思っています。
これも私が保健体育なのでプラスになります。
顧問をしているクラブでのトレーニング方法にも、理学療法士としての知識は生かしています。
ただ教科が国語ならあまりなっていないかも。
患者さんを担当してきて、何に困っているか考える習慣は教師にも生きていますけどね。
先のことは考えてないですけど、いまは教師が楽しいので理学療法士に戻るつもりはないですね。
3年しか理学療法士をしていないのでえらそうなことはいえないですけど。
理学療法士になったからといって、一生理学療法士として働き続けないといけない理由はないですよね。
向き不向きはありますし、仕事のやりがいを感じない人もいるでしょう。
理学療法士から転職してもなんとかやっていけるもんです。
若ければ若いほど動きやすいので、他にやりたいことがあるなら早く飛び出せばいいんじゃないでしょうか。
人生プランを考えて、自分の気持ちに素直になった方がいいですよ。
理学療法士への道は転職で閉ざされるわけじゃないので、何かあればまた戻ればいいんです。
もちろん結婚して子供さんがいる人には簡単な問題ではないので、よく考えた方がいいでしょうね。
理学療法士から会社の事務員に転職
二人目は、理学療法士から会社の事務員に転職した元理学療法士はまちゃん。
はまちゃんの簡単なプロフィールはこちら。
- 高校卒業後に専門学校に入学。
- 1年留年して、4年後に理学療法士国家試験合格。
- 中規模の病院、介護老人保健施設での勤務を経て退職。
- 退職後すぐに就職せず、約半年後に現在の会社に就職する。
- ちなみにゆういちは元バイザー。
私の場合は理想と現実のギャップですね。
理学療法士には憧れていましたが、こんなに大変な仕事とは思いませんでした。
特に人間関係ですね。
私は理学療法士を続けたかったけど、それが難しいのは自分自身がよくわかってました。
後ろ髪を引かれる思いもありましたが、生活のこともあり何か仕事を探さないといけなかったので。
いまは入力や計算の仕事が多いです。
入力ミスをすると会社にも取引先にも迷惑がかかるので緊張の連続です。
理学療法士以外に資格も特技もなかったんですよね。
それでなんとなく会社勤めを始めたんですけど、正直理学療法士より楽だと思っていた部分もあります。
でもどこにいっても人間関係はつきまといますし、ストレスもハンパないです。
あと事務職は女社会なので、これもけっこうきついですね。
戻れるなら戻りたいですけど・・。
私の場合、ブランクが気になりますが、それ以上にまたあの大変な理学療法の現場に戻れるか、それが心配。
理学療法士に復帰してもうまくやっていける気がしないです。
私の場合は、理学療法士への復帰は難しいかもしれませんが、他業種や他職種に従事してから、理学療法士に戻る人もいます。
なのでいろいろ考えずに、もしやりたいことがあるなら挑戦してみるのもいいかもです。
ただ、全く違う分野の仕事を目指すより、いままでの理学療法士の経験を何らかの形で活かせるような仕事の方がはっきりいって楽。
その方があなたの存在価値を発揮できますしね。
理学療法士からの転職のカギは行動力と国家資格の恩恵
ここまで読んでもらえば感じるかもしれないけど、理学療法士からの転職にはポイントがふたつある。
ひとつは行動力。
若い人は何でも挑戦できるんだから、やってみたらいいと思う。
経験年数が少ないってことはまだ何色にも染まれるってことだから。
もうひとつは理学療法士という国家資格の恩恵。
失敗したり、後悔したりして戻りたいと思えば、理学療法士に戻ればいい
いまみたいに望めば100%就職できる時代は続かないかもしれない。
でも他業種での経験をプラスに変えることができれば、おそらく将来的にも就職はできる。
やっぱり国家資格は強い。
理学療法士を辞めてもなんとでもなる。
あかんかったら、理学療法士に戻ればいい。
そう考えるといまの悩みは、あまり深い悩みではないかもしれませんね。