理学療法士が副業でマッサージ業をしていると、最近耳にしたゆういちです。
今回は、理学療法士が副業でマッサージをするときに起こる、法律的な問題を考えてみる。
そして法律の話だけしてもおもしろくないから、合法的にやる方法も紹介するね。
- 理学療法士ってマッサージをしたら違法なの?
- マッサージを仕事にできる国家資格保持者はあん摩マッサージ指圧師と○○
- 理学療法士でもマッサージ業を仕事にするにはどうすればいいか?
理学療法士の職業倫理的な話は今回置いておく。
あくまで理学療法士が副業でマッサージをするときに、法に触れないようにするにはどうすればいいか、その一点を解説する。
「理学療法士だけど週末に副業でマッサージをしてみようかな」
「理学療法士が町のマッサージ店で働くのはダメ?」
などなど、気になる人はぜひ最後まで読んでみて。
理学療法士によるマッサージは診療の補助として使うのは法律的にOK
理学療法士は、治療にマッサージを用いることがある。運動療法の前処置や痛みの軽減のために、筋肉をほぐす目的で行う人が多い。
ROM-exするときにやりやすくなるもんな。
患者さんにとってはマッサージ、でもこちらとしてはその先の治療の前段階やねんけどね。
理学療法士及び作業療法士法にこんな一文がある。
第二条 この法律で「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
法令に記載があるので、マッサージ(正確にはマツサージ)を加えることは理学療法といえる。
あともうひとつ。
読んだことがある人は少ないかもしれないが、日本理学療法士協会には「理学療法士ガイドライン」というものがある。
そのガイドラインには次のように書かれている。
法により理学療法士または作業療法士は、(中略)診療の補助として理学療法または作業療法を行なうこととされている。
引用)理学療法士ガイドライン
ここで注目して欲しいのは「診療の補助」という言葉。
理学療法士や作業療法士がやるセラピーは、あくまで診療の補助という位置づけになっている。
これらより、理学療法士が行うマッサージの法律上の解釈には、3つのポイントがあると考える。
- 理学療法士のやることはあくまで医師の指示の下であり、診療の補助だよ。
- 理学療法の対象者は身体に障害のある者であり、健康な人じゃないよ。
- 理学療法の仕事の目的は、基本的動作能力の回復を図るためだ。
なので、健康な人に「あぁ~、そこ気持ちいい」とマッサージを提供することは、理学療法じゃないし、理学療法士にはできない。
これは知らんかったわ。
法律の解釈なんて誰もチェックしないもん。
マッサージはあん摩マッサージ指圧師と医師の業務独占
もうひとつ知っておかないといけないことがある。
それは、マッサージはあん摩マッサージ指圧師と医師の業務独占だということ。
「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(←長いけどこれが正式名称、通称「あはき法」)には次のように書かれている。
第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
マッサージに関する部分を要約すると「マッサージを仕事にするんだったら、ちゃんと免許とってね」となる。
業務独占なんや。それも知らんかった・・。
理学療法士がマッサージをしてもいいのは診療の補助やから。
なるほど。さっきいうてたこととつながったな。
法律的にはそうやけど、あいまいに放置されてる部分も多いよ。
たとえば、繁華街に行くと○○式マッサージと表記しているお店がある。(○○は国名や施術方法などが入る)
厳密にいうとこれはアウト。
あん摩マッサージ指圧師か医師しかマッサージを業にできないから。
もしこの○○式マッサージ店の店長が、あん摩マッサージ指圧師の国家資格をもっていれば合法にはなるみたい。
厚生労働省も、無資格者によるマッサージは警鐘を鳴らしてる。
ちょっと長いけど興味があれば読んでみて。
医師以外の方が、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復の施術所等において、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅう及び柔道整復を業として行おうとする場合には、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)において、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゅう師免許を、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)においては、柔道整復師免許を受けなければならないと規定されており、無免許でこれらの行為を業として行ったものは、同法により処罰の対象になります。
厚生労働省としましても、都道府県等関係機関と連携して、無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止に努めているところであります。
これもマッサージの関する部分を要約するとこんな感じ。
- 医師以外で、マッサージや指圧を仕事にするなら、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取ってよ。
- 無資格でマッサージをしたら罰せられるよ。
- 厚生労働省としては無資格者によるマッサージや指圧は防止していきたい。
ややこしいな。
書いてて、こんなにマッサージの法律を調べるとは思わんかった・・。
ややこしいので、一旦ここまでのまとめをしておく。
- マッサージはあん摩マッサージ指圧師と医師以外にはできない。(業務独占)
- 理学療法士は診療の補助としてマッサージができるけど、対象と目的が決まっている。
- マッサージを無資格者がすると罰せられる。
マッサージの定義があいまいだから問題がややこしくなる
マッサージの手技には以下の6つがある。
- もむ
- さする
- 叩く
- 振わす
- 圧迫する
- 動かす
でもそれらの施術の定義は曖昧だし、あはき法にもどういうのがマッサージという定義は書かれていない。
そもそも人の手でやることを全部定義するのは無理。
それはいえてる。
「そのもみ方はマッサージ」「いやこの肩の叩き方はマッサージじゃない」という線引は難しいと思わない?
たとえば、無資格者が行った圧迫が、マッサージに当たるかどうかわかる?
どれがあん摩マッサージ指圧師が行う「もみ」なのか、そんな定義はないから。
それを示すように、無資格者が行ったマッサージっぽい行為が、違法になるかどうかはケース・バイ・ケース。判断が難しいと2011年の内閣府の資料に残されている。
特定の揉む、叩く等の行為が、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)第1条のあん摩マッサージ指圧に該当するか否かについては、当該行為の具体的な態様から総合的に判断されるものである。
御照会の事例については、その行為の強度、時間等によっては、同条のあん摩マッサージ指圧に該当する場合もあると考えられるが、御照会の内容だけでは判断できない。
引用)内閣府 委員会本会議資料・議事録 2011年 第78回資料より「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に関する疑義照会について(回答)
だから、無資格者によるすべてのマッサージ店が摘発されないのだと思う。
理学療法士がマッサージを合法的に副業とする方法
前置きが長くなったけど、じゃあ理学療法士がマッサージを副業にするにはどうすればいいか。
でもここまで読んだら、理学療法士は副業でマッサージしたらアウトやろ?
普通にやったらダメやな。だから法に引っかからんようにする。
出た。またグレーなやつや。
その方法とは、このふたつね。
- 理学療法や理学療法士の名称を使わない。
- マッサージという呼び名を使わない。
それぞれ詳しく解説する。
理学療法士は診療の補助以外でマッサージはできない
上でも書いたけど、理学療法士が治療(理学療法)の中でマッサージを用いてもいいのは、医師の指示の下でやっていることだから。
逆にいうと、医師の指示の下じゃなかったら、それは理学療法じゃないし、マッサージをしたらダメ。
なのでマッサージを副業とするときに「理学療法士です」とか、「理学療法士がマッサージ店をやってます」とは絶対書いたらあかん。
これをすると処罰の対象になるから要注意。
理学療法士の職業倫理的にも認められるもんじゃないから、副業でマッサージをするなら理学療法士の資格は伏せよう。
呼び名はマッサージではそれを想起させるものを使う
しつこいようだけど、法律上マッサージはあん摩マッサージ指圧師と医師しかできない。
それなら無資格者が副業でするなら、マッサージじゃなくてリラクセーションとすればいい。
なるほど。でもそれは大丈夫なん?
リラクセーションは法律で定義されてないから法には触れない。グレーやけどセーフ。
リラクセーションサロンとして、リラクセーションを提供すれば違法じゃない。
他にもコンディショニング、ストレッチも問題なし。
大手のマッサージ店では、全身もみほぐしとか看板に書いてけど、全身をもみほぐすだけでマッサージしてるわけじゃないってこと。
なんか黒に近いグレーやなww
抜け道を通ってる感じ。
理学療法士が副業でマッサージをするなら、理学療法や理学療法士という名称と、マッサージという呼称を使わなければ、グレーだけど違法じゃない。
理学療法士が副業でマッサージを実際にするなら方法は2通りある
法的なことはこれでだいたい頭に入ったと思うので、実際に理学療法士が副業でマッサージをする方法を紹介する。
方法はふたつ。
- 個人事業主として営む
- マッサージ店で働く
個人事業主として開業して営む
ひとつ目は個人事業主として、マッサージっぽいことを仕事にする方法。
このときに注意すべきことは、店舗名やホームページ、チラシなどにマッサージと使わないこと。(あと理学療法、理学療法士もNG)
あくまでマッサージっぽいリラクセーションとかね。まあここまで読めばわかると思うけど。
さっき紹介した内閣府の資料にはこんなことも書かれてる。
同条のあん摩マッサージ指圧が行われていない施術において、「マッサージ」と広告することについては、あん摩マッサージ指圧師でなければ行えないあん摩マッサージ指圧が行われていると一般人が誤認するおそれがあり、公衆衛生上も看過できないものであるので、このような広告を行わないよう指導されたい。
引用)内閣府 委員会本会議資料・議事録 2011年 第78回資料より「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に関する疑義照会について(回答)
マッサージとまぎらわしい名前は使うなって、これまでにも問題になってるみたい。
自分で開業する場合は、店舗を構えてもいいけど、店舗は賃料が高くつく。
なので、お客さんの自宅に出張してもいいし、貸しサロンなどを使えば維持費はそれほどかからずにすむ。
集客はホームページやSNS、ポスティングなどになると思うけど、これをすると名前を出さないといけなくなる。
名前を出すと職場にはバレルよね。
そうやねん。そこは大きな問題。
『PTの副業は法律では問題ないけど注意点もある』でも書いたけど、副業では職場の理解と許可が必須。
マッサージを副業でするなら、職場の承認は絶対必要。必ず許可をとってね。
マッサージの副業なんて許可くれる?
あかんやろね。
職場の許可が得られない場合は、やらない、バレて問題になってもいいと腹をくくってやる、その二択。
バレてこまるなら、最初からやらない方がいい。
あと、自分の患者や元患者に声かけして客になってもらうのは絶対に辞めた方がいい。
あなたのリハビリが好きだった人なら、自費でもいいから家に来て欲しいという人がいるかもしれない。
でもこれはバレるとかなり大ごとになる。最悪職場を解雇される可能性もあるので、絶対おすすめしない。
個人事業主って知ってる?
実は理学療法士は個人事業主として開業できるよ。
知らない人は『PTでも開業できる!個人事業主として開業する方法とメリット・デメリット』で詳しく書いてるのでそちらを読んでみて。
マッサージ店で勤務する
ふたつ目はマッサージ店で従業員として勤務する方法。
実際、理学療法士がマッサージ店で勤務する話が、ヤフー知恵袋にいくつか載ってた。
これはどうなん?
理学療法士の非常勤の方がお金がもらえるからすすめない。
まず、マッサージ店で理学療法士が働くというリスクを冒す割には儲からない。
こんなことをするなら、理学療法士として非常勤勤務をした方がいい。日給(時給)もいいし、法律的に問題がないから、勤務先の許可も得やすい。
また大手のマッサージチェーンでは、マニュアルに沿ってマッサージ方法を指導される。
それは無資格の人でもできるレベルのこと。
だから、マッサージ店での仕事に、理学療法士の知識や技術を持ち込むことはできない。
マッサージ店には理学療法士の喜びはないと思う。お金がもらえる以外は。
あと、お店によっては時給ではなく、それぞれが個人事業主として店を契約して営業する形もある。
絶えずお客さんがつくわけではなく、仕事に行ったのにずっと待機してることもあるみたい。
このように個人事業主としてお店を契約結ぶと、場所を借りて営業させてもらってるという扱い。
どういうことかというと、客にケガをさせてしまったらお店は責任をとらず、何かあったらあなたの責任になってしまう。
これだと安心して副業として仕事できるわけがない。
だから、理学療法士がマッサージ店で働くことは絶対おすすめしない。
まとめ
理学療法士のマッサージの副業について書いてきた。
長くなったので最後にまとめます。
- マッサージをしてもいいのはあん摩マッサージ指圧師か医師だけ。
- 理学療法士は診療の補助としてマッサージを用いることが可能。
- マッサージという名称を使わずに施術すれば、グレーだけど違法ではない。
副業をするというリスク、そしてマッサージっぽいことを副業にするという大きなリスクがそこにはある。
副業でする場合には今回の記事の内容を参考に、じっくり考えてからにしようね。